JetBrainsのThinkRailは、並列エージェントをworktreeで分ける

JetBrainsには、あなたがすでに何をしているか分かっている前提でツールを出す癖がある。ThinkRailは違う。その違いはREADMEの一文にある。gitリポジトリをプロジェクトとして開き、そこからgit worktreeとしてワークスペースを切り出す。
それが全体の主張で、「AI IDE」と言うよりよほど良い。ThinkRailはJetBrainsのインキュベータープロジェクトで、約7,100スター、直近1週間で5,760を追加した。オープンなコーディングエージェント pi を中心に作られている。JetBrainsが足したのはチャットパネルではない。複数のエージェントが互いを踏まずに同時に働けるようにする配管だ。
期待ではなくworktree
同じリポジトリで2つのエージェントを走らせたことがあれば、失敗の形はご存じだ。片方が auth.ts を編集し始め、もう片方が auth.ts をリファクタリングしようと決め、あなたは午後を、双方が自分が書いたと信じるマージコンフリクトの発掘に費やす。
ThinkRailの答えはこうだ。すべてのワークスペースは、独自のブランチと独自の作業ディレクトリを持つgit worktreeである。エージェントは並行して働き、どれもあなたのチェックアウトに触らない。気に入ったブランチをマージし、残りを消す。
その上に気の利いた片付けがある。完了したワークスペースと休眠したワークスペースは、PRがマージまたはクローズしたとき、あるいは静かな1週間の後に、プロジェクトごとの棚へ自動で収まり、またそこで作業した瞬間に戻ってくる。fix-thing-2 のような古いブランチを20本抱えたことがあるなら、これは欲しいと気づいていなかった機能だ。

トップバーは、アクティブなブランチが origin とそのPRに対してどこにいるかを追跡し、次の一手を1クリック先に置く。publish、push、あるいはプラン、コミット、自分のテンプレート、エージェントが書いたドラフトから説明を組み立てたPR作成。PRが開けばCIチェックとレビュー判断を表示し、失敗したチェックや分岐したブランチをエージェントに戻せる。
IDE部分は飾りではない
分割できるMonacoタブ、gitの変更マークが生きているファイルツリー、変更ファイルビュー、ターミナル、ドキュメント。すべてアクティブなワークスペースにスコープされる。ファイルや差分に固定コメントを残し、構造化されたコンテキストとしてチャットへ送れる。あるいはworktreeをインストール済みのIDEで開ける。我々の一部が今でもWebStormを欲しがっていることへの、正直な白状である。
チャットはセッションごとのトークンとコストの表示とともに流れる。作っている本人が自腹を切っていないと出てこない種類の細部だ。実行中のターンを操縦し、フォローアップを並べ、サブエージェントに委任し、共有プランをエージェントが更新しながら自分も編集できる。完了したステップは個別にコミットしてレビューできる。「38ファイルです」よりずっと良いレビュー単位だ。
⌘K、またはShiftの2回叩きでコマンドパレットが開き、開いているすべてのプロジェクトをまたいでチャット、ワークスペース、プロジェクトを探せる。何も打っていないときは、あなたを待っているチャットが並ぶ。多くのセッションを回すツールとして正しい既定値だ。
残るものとしてのスペック
何度も戻ってくる機能がスペックグラフだ。つながった SPEC.md の集合がコードの隣に置かれ、エージェントは専用の spec_* ツールを通して読み、検索し、維持する。読み取り専用のSpecsツールは、そのグラフをワークベンチ内でツリーとして描画する。
理屈は筋が通っている。コンテキストウィンドウは終わる。セッションは終わる。残るのは書いたものだ。多くのエージェントツールは「プランを覚えておく」を記憶の問題として扱う。ThinkRailは文書の問題として扱う。半年後に人間も読めるのは後者だ。
同時に、最も腐りやすい機能でもある。エージェントが維持し誰もレビューしないスペックグラフは、もう存在しないソフトウェアについての、非常に自信に満ちた非常に詳細な記述になる。ツールは維持を安くするが、無料にはしない。規律はあなたの側にある。
インストール
2形態あり、どちらも追加型だ。ネイティブのデスクトップインストーラと、同じアプリをブラウザで開く自己完結型CLI。どちらもリリースページに SHA256SUMS を公開している。
macOSまたはLinux、WindowsではGit Bash上でのコマンドライン。
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/JetBrains/thinkrail/main/install.sh | bash
WindowsのcmdまたはPowerShellから。
powershell -c "irm https://raw.githubusercontent.com/JetBrains/thinkrail/main/install.ps1 | iex"
そして、こちら。
thinkrail ~/code/my-repo
PATHに git が必要で、モデルプロバイダも要る。アプリからJetBrains AIでサインインするか、pi 自身の認証で任意のプロバイダにつなぐ。ThinkRailのアカウントは存在しない。JetBrainsから出るとは思わなかった一文だ。
Linuxのデスクトップビルドはglibc 2.38以降とGTK 3、WebKitGTK 4.1、Ayatana AppIndicator 3、librsvg 2が必要で、実際にはUbuntu 24.04以降ということになる。アップデータはパッケージが有効なHTTPSフィードIDを持つ場合にしか現れないので、それより古いインストールは一度手動で入れ直す必要がある。
可搬性を決めている細部
ThinkRailは既存の ~/.pi/agent 設定を読む。仕事用プロファイルを分けているなら PI_CODING_AGENT_DIR で別の場所を指せる。設定のCustom serversではOpenAI互換の任意のエンドポイント——LiteLLM、sglang、vLLM、Ollama、LM Studio、llama.cpp——をつなげ、pi の models.json に書き込む。そのモデルはチャットの選択肢にもCLIにも現れる。
mcp.json のMCPサーバーも引き継がれ、しかも振る舞いが正しい。ThinkRailはサーバーが読み取り専用と明示していない呼び出しの前にチャットで確認し、リポジトリ定義のサーバーは承認するまでオフにし、OAuthのサーバーは設定からサインインさせる。
エージェント拡張も同じくらい実務的だ。設定にエージェントが何を得るかが並び、個別にオフにでき、pi パッケージをnpm、git、ローカルフォルダのいずれからでも、自分用またはリポジトリ用にインストールできる。ask-user-questionとvisualizeツールは別パッケージとして公開されているので、ターミナルの素の pi でも同じ多肢選択プロンプトとインライン図が使える。
注視したいこと
インキュベータープロジェクトが1週間で7,600スターというのは、JetBrainsのリリースサイクルを一度も通っていないものとしては大きな注目だ。JetBrainsのインキュベーターは製品になるか静かに止まるかの歴史があり、ベータは依存するバージョンになりがちだ。
もう1つのリスクは概念的なものだ。これは非常に完成度が高く、サーフェスが多いツールだ。worktree、スペック、パレット、拡張、MCP、テーマ、フォント、4つの組み込み言語と、独自言語を足すための文書化された道。どれもコードを書く代わりに設定する場所になる。ThinkRailにとって最良の結末は、worktreeモデルが正しすぎて誰も話題にしなくなり、アプリの残りが邪魔をしなくなることだ。
すでに並列エージェントを走らせていて、現状の答えが「ターミナルを何枚も開いて神頼み」なら試す価値がある。worktreeの分離だけでダウンロードに値する。普通のIDEとして試すと、そういうものになろうとしていないことが分かる。
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